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シャオミ 世界最速1兆円IT企業の戦略 感想 [読書]

みなさんシャオミという会社をご存知でしょうか?
中国のインターネット事業を手がける会社で、Facebookよりも、Appleよりも、Googleよりも早く1兆円の企業価値となった企業です。あまり日本では知られていないですが、この会社、かなり学ぶべき戦略が多い会社でした。本の内容を簡単にご案内します。

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1. シャオミ会社概要
雷軍(レイジュン)というCEOによって2010年4月6日に設立されました。現在は社員数7000人名。インターネット、総合家電メーカーの事業を手がけ、Just for Fans(ファンのためだけに)というスローガンで経営しています。現在は総合家電も事業に入れていますが、始めはスマホ事業からのスタート。その後ネットワーク効果でスマホから家電、保険、ITなど様々な事業に展開した経済圏を構築しています。
特徴として、ファン経済の構築(ユーザーによる開発参加)、ECでの販売(店舗を持たない)、ハイスペックなのに低価格、SW / HW / インターネットの共存達成などがあります。

2. シャオミの基本戦略
シャオミの基本戦略は下記3つです。
・ファン文化の開発と運営
・「インターネット思想」の究極の展開
・ユーザーの期待を超え続ける

シャオミは、ユーザーをファンにしてファン文化の運営に力を入れていました。シャオミの携帯はコアなファンにウケる技術力の高さを誇っており、広告にお金をかけなくてもファンの中で口コミが広がり、「この携帯はスゴい」という噂がやがてファン以外にも届いて携帯が売れ続けるという仕組みです。ファンの心を掴むため、ファンの携帯電話に対して叶えたい想い、考えは積極的にチャットや電話で聞き入れ、ファンの意見を取り入れたスペックのスマホを定期的に発表するようにしました。ファンは自分の意見がスマホに反映される事に満足感を覚えて、そのスマホから離れなくなります。

また、ハイスペックを叶えようとするほど、一般的にはスマホの値段が高くなりがちです。しかし、シャオミの素晴らしいところは、ユーザーの期待以上のスペックを出すだけでなく、その価格も驚きの低価格で提供する、期待以上のコスパを出していました。

3. シャオミのコンセプト
シャオミは、鉄のトライアングルというHW(ハードウェア)、SW(ソフトウェア)、インターネットの3つを融合させた事業を実現しました。この鉄のトライアングルが実現できているのは、シャオミ以外ではAppleのみです。ハードウェア、ソフトウェア、インターネットはそれぞれが独自の文化を持っているため、その融合は一筋縄ではいきません。

シャオミはCEOの雷軍がソフトウェア事業出身で、他の取締役はHWの専門家、インターネットの専門家を揃えるなど、スタートアップの段階から融合を強く意識した経営陣を構成しました。

これだけ見るとシャオミはAppleの真似をしたように見えるかもしれませんが、シャオミはどちらかというと、「我々はGoogleとAmazonを合わせた企業だ」と言っています。

Googleは検索エンジンだけでなくSWとしてAndroidを扱い、オープンソースでスマホを構成、Amazonはもともと本屋のインターネット事業を展開していましたが、今では本以外にも様々なものを扱っています。シャオミもオープンソースのSWを使いつつ、スマホだけでなくその周辺のサービス、事業を展開するビジネスモデルを採用しています。

4. 興味深い特徴
前述の項目内でも触れましたが、シャオミは興味深い特徴のある企業です。
(1)ECでは携帯は売れない
これは、過去にGoogleが失敗したために固定された先入観でした。あのGoogleですらEC販売ではスマホを満足に売る事が出来なかったのだから、他のどの会社がEC販売をしようとしても売れるわけがない、と考えられていました。シャオミは驚くことにスマホ事業を始めた後店舗販売は全く行なっておりません。全てEC上で販売されていました。そして、新製品が発表されるごとに売り切れ続出になるなど、Googleが成功出来なかったビジネスモデルを成功させています。

(2)良いものでも安く提供できる
シャオミはリアル店舗や工場を持たないので、その分研究開発やユーザーのアフターサービスにコストを集中させることが出来ます。スマホの中身と顧客サービスに対しての付加価値は高くして、生産・製造はOEM受託にして安く抑え、付加価値を低くするようにして、総合すると他社よりも良い製品を安く提供できるようになりました。

(3)在庫ゼロ
EC販売が好調で毎週売り切れが続出するなど、在庫面でユーザーには待たせる事が多くありましたが、シャオミはその週売る分のみを販売して在庫は極力持たないようにしました。物が売れまくったら増産体制を整えると思われがちですが、雷軍はスマホ事業は流行り廃れが激しいので、いつ顧客の趣向が変わるかわからないというリスクがある事を理解していました。余計な在庫を持つとそれはコストです。無駄は徹底的に排除していきました。

(4)マーケティングコストをかけない
マニア(ファンの中でも特にコアなユーザー)を満足させる事に集中し、シャオミのスマホの評判は口コミで広がるようにしました。情報発信はSNSやブログのみにして、CMや広告は使っていません。


こうして見ると、本当に独特な企業であることがわかります。日本でもこんな企業は見たことがありません。スティーブ・ジョブズのシンプルイズベストの考えはユーザーにiPhoneを慣れさせる思想でしたが、雷軍の考えは全く逆です。ユーザーの声をいかに反映させたスマホを作るか。

色んな考え方で出来るスマホ、会社があるんだなと非常に楽しめた本でした。

もしシャオミにご興味がありましたら是非本も読んでみてください。
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お金2.0 佐藤航陽 お金に対する考えが変わる本 [読書]

お金と一言で聞くと、皆さんはどのような物を思い浮かべますか?

私は日本人なので、お金と聞くと1万円札や100円玉など、お札や硬貨をイメージします。多くの方も同じなのではないでしょうか。

この本は、そのお金のあり方が変わってきている、という本です。上記のようなイメージしか持っていなかった私にしてみると、目から鱗の話の連続で、非常に楽しめる内容でした。価値に対して新しい切り口を学べる本として、非常にオススメです。

最近、コインチェック社による仮想通貨をハッキングされる事件が話題になりましたが、最近仮想通貨やフィンテックなど、お金に対して新しいアプローチをしている技術が増えてきました。今後、テクノロジーの進化により、お金・経済の理解もますます変わってきます。本の内容に沿って、今までのお金の考え方から今後のお金のあり方まで、理解を深めて行きましょう。

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1. お金とは?
まずはお金の定義についてです。私は前述の通り、お金と言えばお札や硬貨をイメージするのですが、そもそもお金は何か「価値のあるもの」と交換する目的で作られました。お札や硬貨がまだ無い時代は、物々交換が基本でした。何か自分が欲しいものがあった時は、食料や金属や紙と取り替えて手に入れます。しかし、欲しいものが遠くにあった場合は、食料は傷んでしまう恐れがありますし、金属は重くて持ち運ぶのが困難など、様々なデメリットが出てきます。そのため、それに代替する何かが必要となり、共通の価値を持つ「お金」が登場しました。そのため、お金は当初価値と価値を結びつけるツールに過ぎませんでした。

しかし、主にヨーロッパで革命が頻繁に発生した今から300年前の18世紀あたりから、その役割は変わってきます。それまで人間が重視してきた神や王を信仰する社会から、様々な革命を機に一般の人にもお金が出回るようになりました。そこから段々と世界は資本主義にシフトしていきます。お金をより多く持つ人が権力を握るようになっていく世の中です。そうなると、人はお金をより効率的に増やす方法を模索するようになります。結果、その効率的な方法はお金を使ってお金を増やす今の金融経済が確立されました。

現在多くの国では中央銀行の仕組みが取り入れられて、政府がお金を管理する方法を適用しています。日本だと日本銀行が中央銀行として紙幣を発行してますね。しかし実は、この経済のあり方はこの100年あまりで出来たシステムです。1900年代始めはこの中央銀行の仕組みが取り入れられたのは18ヶ国しかなく、そこから次第に増えていきました。そう考えると、国がお金を管理する仕組みが出来たのはつい最近だったので、今後100年続く保証ってどこにも無いんですよね…。最近仮想通貨やフィンテックなど新しい技術がそのシステムに取って代わって次の100年のメインになる事も十分あり得る話ということです。

2. Fintech1.0→Fintech2.0
ITの進化が進むにつれて、お金周りの技術もどんどん進化していきました。Fintech1.0とは、既存の経済システムの基盤には手を加えずに、その効率を高めていく事に焦点を当てた技術ですね。Suicaやスマホなどでの電子マネー決済、AIを活用しての投資のロボアドバイザーなどが挙げられます。
Fintech2.0は現在ある金融システムからは全く異なる世界、ゼロベースで経済システムを作ってきている技術の事です。ビットコインなど仮想通貨がこの技術の典型です。本書の中では、そのような新しい技術、経済システムについて解説されています。

3. 発展する経済システム
この本の中で著者は、経済システムが発展するには5つの要素が必要だと言っています。①インセンティブ、②リアルタイム、③不確実性、④ヒエラルキー、⑤コミュニケーションです。そして、経済にも寿命があるため、別の経済システムへの移動先と、同じ目的を持った集団という意味での共同幻想が経済システムの持続性に繋がると説いてます。

例としてFacebookが作り上げている経済システムを挙げていますが、Facebookは上記5つの要素を全て備えていて、それに加えてinstagramを買収するなど、人々が記事主体のタイムラインに飽きて(寿命が来て)からも写真や動画などへの別のタイプのタイムラインへ移動できるようにして、自分の生活をシェアしたい、他の人の体験を見てみたいという共同幻想が一致しているため、持続性の高い経済システムを構築していると言っています。

今後登場する経済システムも、上記要素を兼ね備えていれば、自ずと成長していくシステムになるだろうと。

4. シェアリングエコノミーとトークンエコノミー
経済は、現在の中央集権からそのあり方からの変化が始まっています。その考え方として関わってくるのが「分散化」という表現です。この「分散化」は、これまで政府が握っていたお金の管理者特権が、個人へと移し変えられていくという社会根本の変化です。著者は「下克上」とも呼んでいました。その一部として語られるのが、シェアリングエコノミーとトークンエコノミーです。

シェアリングエコノミーに代表されるのがAirbnbやUBERなどのサービスです。
Airbnbはざっくり言うと民泊サービスです。個人の所有宅で使っていない部屋を旅行者などに貸す事で、今まで使っていなかった空間を収入に変える事ができる、一方で旅行者はホテルよりも安価に、地域に密着した生活・文化を味わえると言うサービスです。
UBERはこれまでのタクシー制度に変わるサービスで、個人ドライバーとユーザーを結びつけるものです。これにより、ユーザーは今までのタクシー会社が管理しているタクシーを乗る必要がなく、ドライバーはタクシー会社に雇われなくてもサービスが提供できるようになります。
個人のユーザーが、国や会社に依存する事なく持ち物をシェアして収益を得ることのできるシステムがシェアリングエコノミーです。

一方のトークンエコノミーは、特定のネットワーク内で使用できる独自の通貨を"トークン"として生産して、経済ネットワークの中で使用する仕組みです。国家が発行している通貨ではなく、その縮小版として、個人や企業に向けてトークンを使える仕組みです。
トークンエコノミーはお互いにとって利益と感じるもので成り立つ経済システムなので、1人が利益を独占しようとする動きを見せると、他の人がその経済圏から抜けていってしまいます。経済圏の人口が減るとせっかく独占したトークンの価値も自ずと下がってしまうため、トークンエコノミーの中では現在の資本主義に見られるような資本の独占は起きにくいとされています。言い換えると、トークンエコノミーでは経済圏に参加する人が多ければ多いほど価値が上昇するネットワーク効果があります。
最も規模が大きく成功しているのはビットコインです。完全に分散化が進み、管理者がいなくとも問題が起きればビットコインを保有している(経済圏にいる)人たちが頭を使って問題を解決しようとするところまで自立した経済システムを築いています。

5. 価値の変化
リーマンショックが起きたり、国外のちょっとした事件で株価が変動したりと、現在の経済システムは危ういバランスで成り立っています。これは、現在の資本主義による経済システムの限界が近づいているためです。今後主要になってくる価値についてもこの本には書かれています。

①有用性としての価値
基本的に役に立つ・利用できる・儲かるといった実社会への「リターン」を期待した価値の事です。現在の資本主義経済はこの価値を最も重要視して、伸ばしてきました。

②内面的な価値
実社会に役に立つか?という考えとは別の個人の内面的な価値と結びついた価値です。いわゆる、愛情・共感・感動・興奮など、感情と結びついた価値の事をいいます。景色を見て感動したり、友達と話して楽しかったりした時に感じる価値の事です。インスタグラムから得られる価値がイメージに近いです。

③社会的な価値
個人ではなく、社会全体の持続性のために働くことで得られる価値です。NPO法人等がイメージに近いです。企業はお金にならない事はやらないですが、慈善団体やNPO法人は発展途上国支援や砂漠に植林したりします。

現在の経済システムでは①ばかりが重視されて、②・③はお金にならないため価値としては軽視されがちです。しかし、①を重視している資本主義が限界に近づいてきているため、これから重要度が高まってくるのは②・③の価値です。まだごく一部ですが、instagramやYoutubeなど、自分の趣味や好きな事を周りに発信する事で共感を得られ、投げ銭システムによって人気を上げて収入に繋げている方もいます。今後はそのように「好きなことをして生きていく」というスローガンが仕事まで適用されて、生活の糧にしていく人が増えてくるかもしれません。


【まとめ・感想】
お金の価値が現在の資本主義中心の価値から、内面性が重視される価値へとダイナミックなシフトが続いているという事が良くわかる本でした。

今の社会は、資本主義の経済システムが構築されていく中で働いてきた人たちによって作られていて、仕事をしてお金を稼いでそれが社会での評価に直結するという事が常識という方が会社の上司に多いのではないでしょうか。それは、昔は経済的に日本全体が乏しく、お金=裕福というイメージが固まっている人たちなので、仕事命になっているのは仕方ないのかなと思います。しかし、1980年~1990年代に生まれた子供は既に物やお金に囲まれて育っている子が多い為、資本はあって当たり前のため、内面性の評価の方が大事なんだろうなと思います。年配者は若者の事を「ゆとり」と表現しますが、それは実はゆとりなのではなく、ただの評価の違いが、年配者には理解できない行動(飲み会に付き合わない、残業はしない等)に結びついているのかもしれません。

色々な社会で発生している問題も読み解いていける本だったように思います。今後のお金や経済に関しての視野が広がる事はもちろん、新しい価値観を持って自分の周りの社会、また自分が大切にしているものは何だろうと見つめなおすきっかけになった本でした。

非常にお勧めなので、みなさんも是非読んでみてください。

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